こんにちは。
ハピネスワークKRです。
最近、ストーリーなどを作るための勉強として
「手塚治虫の漫画の教科書」という本を
読んでみました。
(出典元:Amazon)
ストーリーの作り方が書いてあるかな、と思い
手に取ってみた本でした。
実際、ストーリーについても学べるとてもいい本。
しかしやはりプロ漫画家が書いた本。本領は漫画です。
漫画の描き方、そして漫画とは何なのか、という点が
物凄く面白い本でした!
現在、当サークルはAIイラストを用いながら
ゲーム制作を行っています。
その過程や楽しみとしてイラストを生成するのですが
「漫画を作れるか」と問われると
「パチモンしか作れない」と答えざるをえません。
どれだけ同じキャラを生成することができても、
服装を同じにすることができても、
表情差分を作ることができても、です。
なぜだろう、という答えのピースが
この本に書かれていたように思います。
その理由は、
漫画とAIイラストは対照的な立ち位置にあるからです。
非常に勉強になったので共有したいと思います。
AIイラストは平均回帰である
さて、まずここでAIイラストとは何なのか。
今回の問題を考えるには
ここが抑えるべきポイントの一つです。
AIイラストとは、究極の事を言えば
「平均回帰」を色に落とし込んだものです。
そして色の集合体としてイラストを生成しています。
「同じ赤色で丸を塗りつぶせばリンゴっぽい」というような
イラストごとの特徴を異常な数覚えさせます。
その覚えさせたイラストを順位付けし、
中央となるような画像を出させるのです。
Stable DiffusionのSampling stepの数値とは、
「何回で中央の山札に近づきますか」という設定値であり、
数が多ければそれだけ中央に近いイラストが出ます。
「1万枚の山札の中から1発でど真ん中のカードを取り出して」
と頼まれたら無理な感じがしますけれど、
「1万枚の山札の中から10回でど真ん中のカードを取り出して」
ならまだやりやすそうだと思いません?
これをキャンバス全体に適応させて
色を集合させていったのが
AIが生成するイラストです。
生成AIにとってのイラストって?
生成AIにとってのイラストとは、ドットの集合体です。
マリオの初代から現代にかけての変遷を見ると
ここは分かりやすいと思います。
初代マリオ(出典元:ゲームドット絵図鑑)
現代マリオ(出典元:プリ画像)
昔の時代と現代の画像の違いは
- 表示するドット数が多いか少ないか
- 表示できる色の種類が多いか少ないか
という2つのポイントに集約されます。
少なくとも、生成AIが共通して認識できるのは
この2つだというのが重要です。
例えばマリオの画像をStable Diffusionで出したければ
「赤い帽子」「青いツナギ」「髭」
「黒い瞳」「靴」「白い手袋」etc….
というような特徴を出す方がいいのです。
その方が「生成AIには分かりやすい」指示の出し方。
「マリオを描いて」よりよっぽど
生成AIはドットを打ちやすくなってくるのです。
漫画とは「省略」「誇張」「変形」である
次に、最初に紹介した本の中で
漫画とは何か、をズバリ指摘した部分を紹介します。
手塚治虫さんの考えでは、
漫画とは「省略」「誇張」「変形」です。
これにはなるほど、と思わされました。
いきなりなんだこれ、と言われそうですが
筆者がペンとメモ用紙に描いた漫画です。
「ドッキリを仕掛けた人と仕掛けられた人」。
生成AIにこの絵は描けないという事です。
なぜなら、この絵は「イラストとして目茶苦茶」だから。
体や服を省略してるし、顔を誇張してるし、
手なんて変形させすぎています。
子どもが見ても笑うかもしれません。
ですが、これだって漫画として成立します。
必要な情報は捉えてるし、適切に省略しています。
そして驚いた顔を誇張、そのために他は変形させます。
こうしたイラストは、生成AIには
ドットの集合として捉えづらい。
白と黒が並んでる、ぐらいにしか捉えないでしょう。
人にとっての漫画って?
人にとっての漫画とは、想像をさせる絵です。
生成AIとは異なり点の集合としては捉えていません。
先ほど挙げたマリオをみてみましょう。
初代マリオ(出典元:ゲームドット絵図鑑)
現代マリオ(出典元:プリ画像)
この2つは同じイラストではありません。
ですが、私たちは同じ「マリオ」と認識します。
むしろ「制限の中でここまでできるか」と
昔のイラストを凄いと思う人もいるでしょう。
漫画もこれと同じ。
絵の先に「自分が思い描くキャラ」を想像できるのが大事。
どれだけ正確かだなんて、想像を助けるための手段なのです。
想像さえできてしまえば、
他は思い切りやっていいのが漫画です。
そのため、省略、誇張、変形が許されるのです。
生成AIの漫画は「整ったイラスト集」になりがち
話をまとめにしていきたいと思います。
2024年2月23日の現状、漫画を生成AIで作ろうとすると
いったい何が起こるのか。
結論、「セリフが乗ったイラスト集」になりがちです。
これは漫画としてはパチモンと言われても仕方がない。
人間は漫画を見ることで
「このキャラは何を感じてるんだろう」
「あぁ、するする。こういう顔するよね。」といった
絵の先にある想像を楽しんでいるのです。
エロでもそうですよね。
SEXのイラストを見て興奮できるのは
行為の最中の快感を(例え未経験だったとしても!)
想像できるからです。
一方、生成AIにとってのSEXのイラストとは何か。
肌色に近い成分の集合でしかないのです。
手塚治虫さんの漫画も白黒の集合としか捉えません。
生成AIが作りやすいイラストは平均的な点の色の集合。
その先に何を想像するとか一切ありません。
これが、イラスト集になってしまう原因なのです。
生成AIで「面白い漫画やイラスト」を作るためには
では、生成AIで「面白い漫画」や「味のあるイラスト」を
作るために何をすればいいのか。
「何を誇張、省略、変形するのか」を
生成AIにクリアに伝えてあげる必要があるでしょう。
例えばこんな画像なら面白いと思えませんか?
この画像を生成するために行った誇張は
- 口を顔の下半分にする
- 口の中を黒く塗りつぶす
- 瞳をものすごく小さくする
といったものになります。
ここから眉を変形させたり耳を省略するなど、
いろいろ変えていくとより漫画っぽくなるでしょう。
つまり「ネガティブプロンプトと格闘する」必要がある!!
漫画とはネガティブプロンプトの塊だったわけです。
これが、漫画とAIイラストが対照的な理由。
面白いイラストを生成したいのであれば
ネガティブプロンプトを使いこなさないといけない…!!!
という非常に厄介な結論に至ったのでした。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は、手塚治虫さんの本をベースに
考えてみたことをまとめてみました。
- AIイラストと漫画の違い
- 生成AIと人の絵に対する捉え方の違い
- 生成AIで面白い漫画を作る方法
がお分かりいただけたと思います。
漫画を描くアプローチとAIによる画像生成のアプローチが
ここまで違うとは筆者も思っていませんでした。
非常に勉強になりましたし、好奇心をそそられました…!!
作者は漫画を作る人間ではありませんが、
イラストを今後生成していくにあたり
この考え方は覚えておいて決して損はないと感じました。
今後のイラスト生成にうまく繋げて行けたらと思っています。
それでは、また!!
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